数年前まで、私は自分のことを健康そのものだと信じていました。しかし、今思えば、体はいくつもサインを送ってくれていたのです。当時、私が自覚していた唯一の症状は、日中のどうしようもない眠気でした。特に午後の会議では、自分の意志とは裏腹に、まぶたが重く垂れ下がってきて、上司の話が子守唄のように聞こえてしまうのです。何度かカクンと舟を漕いでしまい、そのたびに冷や汗をかきました。歳のせいか、仕事の疲れが溜まっているのだろう。そう軽く考えていました。そんな私の認識を根底から覆したのが、妻からの一言でした。「あなた、夜中に時々、息が止まっていてすごく心配なんだけど」。最初は冗談だろうと笑い飛ばしました。いびきがうるさいとは言われたことがありましたが、息が止まっているなんて、全く自覚がなかったからです。しかし、妻は真剣でした。ガーガーと大きないびきが突然静かになり、十数秒も無音の状態が続いたかと思うと、「グガッ」と、まるで溺れた人が息を吹き返すような、苦しそうな呼吸で再びいびきが始まるのだと言います。その様子をスマートフォンで録画して見せられた時、私は言葉を失いました。そこに映っていたのは、安らかに眠っているとは到底言えない、苦しそうな自分の姿でした。これはただ事ではないかもしれない。妻に強く勧められ、私はしぶしぶ専門のクリニックを受診しました。自宅でできる簡易検査を受けた結果、睡眠時無呼吸症候群、それも重症だと診断されました。診断が確定した時はショックでしたが、同時に、長年悩まされてきた日中の眠気や起床時の頭痛の原因がようやく分かったという安堵感もありました。治療としてCPAP(シーパップ)という機械を使い始めてから、私の生活は一変しました。夜はぐっすりと眠れ、朝はスッキリと目覚めることができます。日中の眠気も嘘のようになくなり、仕事にも集中できるようになりました。今、私が心から思うのは、家族の指摘に耳を傾けて本当に良かったということです。もしあのまま放置していたらと思うと、ぞっとします。