子供が突然、噴水のように嘔吐し、ぐったりしてしまう。おむつを替えるたびに水のような下痢が続いている。そんな時、親としては気が動転し、一刻も早く病院へ連れて行きたいと思うものです。この時、大人の場合は内科や消化器内科が選択肢となりますが、子供の場合はどうでしょうか。結論から言えば、中学生くらいまでの子供の胃腸炎は、「小児科」を受診するのが最も適切です。小児科は、単に「体の小さい大人」を診る科ではありません。成長・発達の途上にある子供の体の特性を熟知し、年齢や体重に応じたきめ細やかな医療を提供する、子供のための総合診療科です。子供の胃腸炎で最も注意すべき点は、大人に比べて非常に「脱水症状」に陥りやすいということです。子供は体内の水分量が占める割合が大人より多く、少しの水分喪失でも体のバランスが崩れやすいのです。また、自分で積極的に水分を摂ることができなかったり、嘔吐が激しくて飲んでもすぐに吐いてしまったりすることも少なくありません。小児科医は、子供の脱水状態を正確に評価するプロフェッショナルです。皮膚の張りや、おしっこの回数、泣いた時に涙が出ているか、口の中が乾いていないかといった点を注意深く観察し、脱水の重症度を判断します。そして、経口補水液の上手な飲ませ方を指導したり、必要であれば点滴による水分補給を迅速に行ったりと、子供の特性に合わせた的確な対応をしてくれます。また、薬の処方においても、小児科医は年齢や体重に基づいた適切な用量を熟知しています。大人と同じ薬でも、子供には使えないものや、量を厳密に調整する必要があるものがたくさんあります。その点、小児科であれば、子供の体に負担の少ない安全な薬を処方してもらえるため安心です。もちろん、休日や夜間などで小児科が閉まっている緊急時には、内科や救急外来を受診することもやむを得ませんが、可能な限り、まずはかかりつけの小児科に相談するのが、子供の胃腸炎における最善の選択と言えるでしょう。