睡眠時無呼吸症候群の影響は、夜間の睡眠中だけにとどまりません。むしろ、日中の生活の質を大きく損なう様々な症状となって現れることこそが、この病気の深刻な側面と言えるでしょう。最もよく知られている日中の症状は強烈な眠気ですが、それ以外にも、心身に多岐にわたる不調を引き起こします。その一つが、「起床時の頭痛」です。朝、目が覚めた時になぜか頭が重かったり、鈍い痛みが続いたりする経験はありませんか。これは、睡眠中に呼吸が止まることで、体内の二酸化炭素がうまく排出されずに溜まってしまい、脳の血管が拡張することが原因で起こると考えられています。通常、数時間で痛みは和らぎますが、毎朝のように繰り返される頭痛は、質の良い睡眠がとれていない明確な証拠です。また、「慢性的な倦怠感」や「疲労感」も多くの患者さんが訴える症状です。夜間に体が低酸素状態と覚醒を繰り返すことは、本人に自覚がなくても、体にとってはフルマラソンを走っているかのような大きな負担となります。そのため、どれだけ長く寝ても疲れが取れず、日中はずっと体がだるく、気力が湧かないという状態に陥ってしまいます。さらに、脳への影響も深刻です。慢性的な酸素不足は、脳の働きを低下させ、「集中力の低下」や「記憶力の悪化」を招きます。仕事や勉強の効率が落ちたり、物忘れが多くなったりするだけでなく、新しいことを覚えるのが困難になることもあります。こうしたパフォーマンスの低下は、本人の自信を喪失させ、精神的なストレスにも繋がります。実際、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、原因不明の「気分の落ち込み」や「イライラ」といった、うつ病に似た精神症状を呈する方も少なくありません。日中の様々な不調が、実は夜間の無呼吸に起因している可能性を理解し、その根本原因に対処することが、健やかな毎日を取り戻すための鍵となるのです。