関節リウマチの治療薬は、ここ十数年で目覚ましい進歩を遂げてきました。その中でも、生物学的製剤に続いて登場し、治療の選択肢を大きく広げたのが「JAK(ジャック)阻害薬」と呼ばれる新しいタイプの経口薬(飲み薬)です。生物学的製剤が注射や点滴で投与されるのに対し、JAK阻害薬は1日1回または2回の服用で済むため、自己注射の負担や通院の手間が軽減されるという大きなメリットがあります。この薬は、関節リウマチの炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質の情報を細胞内に伝える「JAK(ヤヌスキナーゼ)」という酵素の働きをブロックすることで、炎症や痛みを強力に抑えます。その効果は生物学的製剤に匹敵するとされ、多くの患者さんにとって新たな希望となっています。では、気になるその費用はどのくらいなのでしょうか。JAK阻害薬も、生物学的製剤と同様に薬価が高く設定されているため、治療費は高額になります。3割負担の医療保険を利用した場合、薬剤の種類や用法・用量によって異なりますが、月々の薬剤費だけでおおよそ35,000円から45,000円程度が目安となります。これに加えて、診察料や定期的な検査費用がかかります。やはり、従来の抗リウマチ薬のみで治療する場合と比較すると、負担は大幅に増加します。しかし、ここでも心強い味方となるのが、これまで述べてきた「高額療養費制度」です。JAK阻害薬による治療も、この制度の対象となります。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払いは、所得に応じた自己負担限度額までとなります。例えば、一般的な所得の方であれば、月々の支払いは最終的に8万円台に、さらに勤務先の健康保険組合などに「付加給付制度」があれば、2万5000円程度にまで抑えることが可能です。飲み薬だからといって、注射薬である生物学的製剤と比べて費用が格段に安いわけではありません。治療法を選択する際には、それぞれの薬のメリット・デメリット(効果、副作用、投与方法など)を主治医とよく相談すると共に、費用面についても、高額療養費制度を利用した場合の最終的な自己負担額がいくらになるのかを具体的に確認することが非常に重要です。