病院で胃腸炎と診断され、薬を処方されても、それだけで症状がすぐに消えるわけではありません。胃腸炎からの回復を早め、体力の消耗を最小限に抑えるためには、医療機関での治療と並行して、自宅での適切なセルフケア、特に「食事」と「水分補給」が極めて重要になります。まず、胃腸炎の急性期、つまり嘔吐や下痢が最も激しい時期には、無理に食事を摂る必要はありません。むしろ、固形物を食べることで胃腸に負担をかけ、症状を悪化させてしまう可能性があります。この時期に最優先すべきは、何よりも「水分補給」です。嘔吐や下痢によって、体内からは水分と共にナトリウムやカリウムといった電解質(イオン)が大量に失われます。ただの水やお茶だけを飲むと、体液が薄まってしまい、かえって脱水を助長することがあります。そこで役立つのが「経口補水液」です。薬局などで市販されており、水分と電解質を最も効率よく体に吸収できるバランスで配合されています。これを、一度にがぶ飲みするのではなく、スプーン一杯やペットボトルのキャップ一杯分を、5〜10分おきに根気よく摂取するのがポイントです。嘔吐が少し落ち着いてきたら、食事を再開します。しかし、いきなり普段通りの食事に戻すのは厳禁です。胃腸に優しく、消化の良いものから少しずつ試していきましょう。食事療法の基本は、「低脂肪・低残渣(ていざんさ)」です。脂肪分の多い揚げ物や肉類、食物繊維の多い野菜(ごぼう、きのこなど)や果物は、胃腸に負担をかけるため避けるべきです。おすすめは、おかゆ(重湯から始め、徐々に米の量を増やす)、よく煮込んだうどん、すりおろしたりんご、豆腐、白身魚の煮付けなどです。乳製品や、オレンジジュースなどの柑橘系の飲み物、香辛料の強い刺激物、アルコール、カフェインも、回復するまでは控えましょう。症状が改善してきたからといって油断せず、数日間は消化の良い食事を続け、徐々に普段の食事に戻していくことが、ぶり返しを防ぐための鍵となります。辛い症状の時こそ、焦らず、胃腸をいたわる丁寧なセルフケアを心がけてください。
胃腸炎と診断された後の食事とセルフケア