指先にしびれを感じると、多くの人は手や手首に原因があると考えがちです。しかし、実はその大元である「首」に問題が隠れているケースも少なくありません。私たちの首の骨、すなわち頚椎(けいつい)の中には、脳から腕や手へと向かう重要な神経の束である脊髄が通っています。この頚椎が、加齢などによって変形したり、骨と骨の間にあるクッション材の役割を果たす椎間板が飛び出したり(頚椎椎間板ヘルニア)すると、脊髄や、そこから枝分かれする神経根が圧迫され、その神経が支配する領域、つまり腕や指先にしびれや痛み、力の入りにくさを引き起こすのです。これを総称して「頚椎症」と呼びます。頚椎症によるしびれには、いくつかの特徴があります。まず、しびれが特定の指だけでなく、腕全体や肩甲骨の周りにも広がることがあります。また、首を後ろに反らしたり、特定の方向に傾けたりすると、しびれが強くなるのも特徴的なサインです。朝起きた時に首や肩が凝り固まっている、上を向くのがつらい、といった首自体の症状を伴うことも多いです。どの神経が圧迫されているかによって、しびれの出る指も異なります。例えば、親指や人差し指がしびれる場合は、主に第6頚神経、中指は第7頚神経、薬指や小指は第8頚神経の障害が疑われます。このような症状に心当たりがある場合、受診すべき診療科は「整形外科」です。整形外科では、レントゲンやMRIといった画像検査を用いて、頚椎の状態や神経の圧迫の程度を詳しく調べます。治療は、まず首への負担を減らすための生活指導や、首を牽引する理学療法、炎症を抑える薬の内服といった保存的な方法が中心となります。首の安静を保つために、頚椎カラーという装具を処方されることもあります。ほとんどの場合はこれらの治療で症状が改善しますが、麻痺が進行して歩行障害が出たり、日常生活に深刻な支障をきたしたりする場合には、神経の圧迫を取り除くための手術が検討されることもあります。指先のしびれを感じたら、一度、ご自身の首の状態にも目を向けてみることが大切です。