急な腹痛、嘔吐、下痢といった胃腸炎の症状で病院にかかろうとする際、「内科」と「消化器内科(胃腸科)」という二つの選択肢を前に、どちらを選ぶべきか悩むことがあります。どちらも胃腸炎を診てくれることに変わりはありませんが、その専門性や役割には少し違いがあります。この違いを理解しておくことで、自分の症状や状況に合わせた最適な選択ができます。まず、「内科」は、体の内部に起こる様々な病気を幅広く診療する科です。いわば、体の不調に関する総合的な窓口であり、風邪や生活習慣病、アレルギー疾患など、非常に守備範囲が広いのが特徴です。急性の胃腸炎は、非常に一般的な疾患であるため、ほとんどの内科クリニックで十分な診断と治療が可能です。問診や診察からウイルス性胃腸炎などの可能性が高いと判断し、脱水予防の指導や、症状を緩和するための対症療法(整腸剤、吐き気止めなど)を行います。かかりつけの内科医がいる場合は、普段の健康状態も把握してくれているため、安心して相談できるでしょう。地域のかかりつけ医として、プライマリ・ケアを担うのが内科の大きな役割です。一方、「消化器内科」や「胃腸科」は、内科の中でも特に食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓といった「消化器」に関連する病気を専門的に扱う科です。消化器領域のエキスパートであり、より深い知識と経験を持っています。一般的なウイルス性胃腸炎であれば内科と治療方針は大きく変わりませんが、症状が非典型的であったり、重症であったりする場合には、その専門性が発揮されます。例えば、激しい腹痛が続く、血便が出る、高熱が下がらないといった場合、食中毒の原因菌を特定するための便培養検査や、他の重大な病気(虫垂炎、大腸憩室炎、炎症性腸疾患など)との鑑別が必要になります。このような状況では、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)などの専門的な検査を迅速に行える消化器内科がより適していると言えます。まとめると、一般的な急性の胃腸炎であれば、まずは身近な「内科」で問題ありません。しかし、症状が重い、血便がある、何度も繰り返すなど、少しでも不安な要素がある場合は、最初から「消化器内科(胃腸科)」を受診した方が、よりスムーズで的確な診断・治療に繋がる可能性が高いと言えるでしょう。