医療専門職による監修記事やインタビュー

2025年8月
  • リウマチ治療費のための確定申告「医療費控除」

    生活

    関節リウマチの治療を受けている方が、年間の医療費負担を少しでも軽減するために、ぜひ活用したい制度の一つが「医療費控除」です。これは、確定申告を行うことで、納めた税金の一部が還付される(戻ってくる)、あるいは翌年の住民税が減額されるという制度です。関節リウマチのように、継続的な通院や高価な薬剤治療が必要な場合、この制度の対象となる可能性は非常に高いと言えます。医療費控除の基本的な仕組みは、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の合計が、一定額を超えた場合に適用されるというものです。この「一定額」とは、原則として「10万円」です。ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、「総所得金額等の5%」の額となります。ここでいう「医療費」には、病院の窓口で支払った診察料や検査料、処方された薬代はもちろんのこと、通院のために利用した公共交通機関(電車、バスなど)の交通費も含まれます。タクシー代は、緊急時などやむを得ない場合を除き、原則として対象外となるため注意が必要ですが、毎回の通院交通費を記録しておくことは重要です。また、ドラッグストアなどで購入した市販の湿布薬や鎮痛薬なども、治療のために必要なものであれば対象となります。医療費控除を受けるためには、ご自身で確定申告を行う必要があります。会社員の方で、普段は年末調整で納税が完了しているという方も、医療費控除を受けるためには、翌年の2月中旬から3月中旬にかけての確定申告期間中に、税務署へ申告書を提出しなければなりません。申告の際には、1年間に支払った医療費の領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成する必要があります。現在は、領収書の提出は不要になりましたが、明細書の作成と、領収書の5年間の自宅保管が義務付けられています。また、加入している健康保険組合などから送付される「医療費通知(医療費のお知らせ)」を添付すれば、明細書の記入を簡略化することもできます。手続きが少し面倒に感じられるかもしれませんが、特に生物学的製剤やJAK阻害薬といった高額な治療を受けている場合、還付される金額も大きくなる可能性があります。1年間の領収書は大切に保管し、ぜひ確定申告にチャレンジしてみてください。

  • 自分で潰すのは絶対ダメ!内麦粒腫の正しい対処

    知識

    まぶたの裏にできた内麦粒腫。痛みや異物感が気になり、特に白い膿の点が透けて見えるようになると、「これを針で刺して膿を出せば、すぐに治るのではないか」という衝動に駆られる人がいるかもしれません。しかし、その行為は絶対にやってはいけない、極めて危険な行為です。自分で内麦粒腫を潰そうとすることは、症状を悪化させ、さらなる合併症を引き起こすリスクしかありません。その理由はいくつかあります。まず、衛生管理の問題です。家庭にある針やピンセットは、いくら消毒したつもりでも、医療機関で使われる滅菌された器具とは比べ物になりません。不潔な器具で皮膚を傷つけることで、原因菌であるブドウ球菌だけでなく、他の様々な雑菌を傷口から侵入させてしまう「二次感染」を引き起こす可能性があります。これにより、炎症がさらに悪化し、腫れや痛みがひどくなるだけでなく、最悪の場合、まぶた全体に感染が広がる「眼瞼蜂窩織炎(がんけんほうかしきえん)」という重篤な状態に陥ることもあります。そうなると、点滴による強力な抗生物質治療や、入院が必要になるケースさえあるのです。また、無理に潰そうとすると、正常な組織まで傷つけてしまい、まぶたの形が変形したり、傷跡が残ったりする原因にもなります。さらに、膿を完全に排出しきれず、炎症がまぶたの深部へと広がってしまう危険性もはらんでいます。では、内麦粒腫ができてしまった時の正しい対処法とは何でしょうか。それは、できるだけ早く「眼科を受診する」こと、これに尽きます。眼科では、まず抗生物質の点眼薬や眼軟膏が処方され、炎症を鎮めます。多くの場合、これらの保存的な治療で膿は自然に吸収されたり、自然に破れて排出されたりして治癒に向かいます。しかし、膿が大量に溜まって腫れや痛みが非常に強い場合や、薬だけでは改善しない場合には、医師の判断のもとで「切開排膿」という処置が行われることがあります。これは、滅菌された清潔な環境で、医師が専門的な器具を用いて小さな切開を加え、安全かつ確実に膿を排出する医療行為です。自分で潰す行為とは、安全性において天と地ほどの差があります。気になるしこりや痛みは、自己判断で危険な行為に及ばず、必ず目の専門家である眼科医に委ねることが、最も安全で確実な回復への道なのです。

  • 子供の喘息は小児科へ、その理由とは

    医療

    お子様が夜中に苦しそうな咳をしたり、息をするたびにゼーゼーと音がしたりすると、親としては心配でたまらないものです。子供の喘息(小児喘息)を疑った時、親がまず連れて行くべき診療科は、迷わず「小児科」です。大人の喘息であれば呼吸器内科やアレルギー科が専門となりますが、子供の場合は、まず子供の体の総合的な専門家である小児科医に診てもらうことが最も重要です。その理由はいくつかあります。第一に、子供の気道は大人に比べて細く、粘膜もデリケートです。そのため、大人であれば何でもないような少しの刺激やウイルス感染でも、容易に気道が狭くなり、喘息発作を引き起こしやすいという特徴があります。小児科医は、こうした子供の体の発達段階や解剖学的な特徴を熟知しており、それを踏まえた上で診断と治療を行います。第二に、子供の喘息の診断は、時に難しい場合があります。特に乳幼児では、呼吸機能検査をうまく行うことができないため、症状や診察所見から総合的に判断する必要があります。また、喘息と症状が似ている他の病気、例えばRSウイルス感染症などの気管支炎や、異物の誤嚥などとの鑑別も重要です。小児科医は、こうした小児特有の疾患に関する幅広い知識を持っており、的確な鑑別診断が可能です。第三に、治療における専門性です。小児喘息の治療薬は、吸入ステロイド薬が基本となりますが、その薬の選択や用量の調整には、子供の年齢や体重、症状の重症度に応じたきめ細やかな配慮が必要です。また、吸入器を上手に使えない小さな子供のために、吸入補助器具(スペーサー)を用いたり、保護者への丁寧な指導を行ったりするのも、小児科医の重要な役割です。さらに、小児喘息は、成長と共に症状が改善していく(寛解する)ことも少なくありません。小児科医は、発作時の治療だけでなく、発作を起こさないための長期的な管理計画を立て、子供の成長を見守りながら、将来的に薬を減らしたり、やめたりすることを目指した治療を行ってくれます。このように、診断から治療、長期的な管理まで、子供の特性をトータルで診てくれる小児科こそが、お子様の喘息における最適なパートナーと言えるのです。

  • 市販薬に頼る前に知りたい病院へ行くタイミング

    医療

    市販薬は、その使い方を誤ると、かえって便秘を悪化させたり、腸の健康を損なったりする危険性があることを知っておく必要があります。特に注意が必要なのが、腸を直接刺激して無理やりぜん動運動を起こさせる「刺激性下剤」です。センナやビサコジルといった成分が含まれる薬がこれにあたります。確かに効果はシャープですが、これを長期間にわたって連用すると、腸がその強い刺激に慣れてしまい、次第に薬なしでは排便できなくなる「依存」の状態に陥りやすくなります。さらに、だんだんと効きが悪くなり、薬の量を増やさないと出ないという悪循環に陥ることも少なくありません。これは、腸本来の自然な排便能力を衰えさせてしまう、非常に好ましくない状態です。市販薬は、あくまで旅行中や一時的な体調不良など、急な便秘に対する「頓服薬」として利用するのが賢明な付き合い方です。では、どのような状態になったら、市販薬に頼るのをやめて、専門医の診察を受けるべきなのでしょうか。そのタイミングを見極めるための、いくつかの重要なサインがあります。まず第一に、「市販薬を飲んでも、以前のようにスッキリと出なくなった」「効き目が弱くなり、薬の量を増やさないと効果を感じられなくなった」時です。これは、腸が薬の刺激に慣れてしまっているサインであり、治療方針を見直す必要があります。第二に、「市販薬を週に3、4回以上、常習的に使わないと排便がない」状態が続いている場合です。これは、もはや自力での排便が困難になっている証拠であり、専門的な治療介入が必要です。第三に、「便秘だけでなく、激しい腹痛や吐き気、お腹の張りなど、他のつらい症状を伴う」ようになった時です。薬の副作用や、背景に別の病気が隠れている可能性も考えられます。このようなサインに気づいたら、ためらわずに「消化器内科(胃腸科)」を受診してください。医療機関では、便秘のタイプを正確に診断し、依存性の少ない、より安全で効果的な薬を処方してくれます。近年では、腸の水分分泌を促す薬や、胆汁酸の働きを利用する薬など、刺激性下剤とは全く異なる作用機序を持つ新しいタイプの便秘治療薬が登場しており、治療の選択肢は大きく広がっています。自己判断で市販薬を使い続けるリスクを理解し、専門家と相談しながら、腸の健康を取り戻すための根本的な治療へとシフトすることが大切です。

  • そのしびれは脳のサイン?緊急性の高い危険な症状

    医療

    指先のしびれは、多くの場合、手や首の問題からくるもので、緊急を要するケースは稀です。しかし、ごく一部ではありますが、脳梗塞や脳出血といった、一刻を争う脳の病気の前兆やサインとして現れることがあります。これらの危険なしびれを見逃さないためには、その特徴を知っておくことが何よりも重要です。まず、最も注意すべきなのは、しびれの「始まり方」と「伴う症状」です。脳が原因のしびれは、ある日突然、何の前触れもなく発症することが特徴です。そして、単に指先だけがしびれるのではなく、いくつかの特徴的な神経症状を同時に伴います。例えば、「片側の手足全体がしびれる、または力が入らない」「ろれつが回らない、言葉がうまく出てこない」「顔の半分が歪む、よだれが垂れる」「立っていられないほどの激しいめまいやふらつきがある」「物が二重に見える、視野の半分が欠ける」「経験したことのないような激しい頭痛がする」といった症状です。これらのうち、一つでも当てはまる症状が指先のしびれと共に見られた場合は、様子を見ている時間はありません。それは「脳卒中」を強く疑うべき危険なサインです。すぐに救急車を呼ぶか、ためらわずに救急外来を受診してください。受診すべき診療科は「脳神経外科」あるいは「脳神経内科」です。これらの科では、CTやMRIといった画像検査を迅速に行い、脳の中で何が起きているのかを正確に診断します。特に脳梗塞の場合、発症から数時間以内に血栓を溶かす治療(t-PA治療)などを行えるかどうかで、その後の後遺症の程度が大きく変わってきます。時間が勝負なのです。「指先のしびれくらいで救急車なんて大げさだ」と思うかもしれません。しかし、もし上記のような症状を伴うのであれば、その判断が生死を分ける可能性さえあります。いつものしびれとは違う、何かおかしいと感じたら、それは体が発している緊急警報です。決して軽視せず、迅速に行動することを心がけてください。

  • パートナーのいびきは病気のサインかも

    知識

    毎晩、隣で眠るパートナーから聞こえてくる、轟音のようないびき。最初は我慢できても、それが毎日のこととなると、自身の安眠が妨げられて大きなストレスになります。しかし、そのいびきが、単にうるさいだけでなく、パートナーの健康を脅かす危険な病気のサインかもしれないとしたら、どうでしょうか。睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされるいびきには、正常ないびきとは異なる、特徴的なパターンがあります。ベッドパートナーや家族は、その最も近くにいる観察者であり、病気の早期発見において非常に重要な役割を担っています。注意深く観察してほしいのは、いびきの「音の変化」と「リズム」です。規則正しくガーガーと続いていた大きないびきが、突然、完全に止まってしまう。まるで電源が切れたかのように、不気味なほどの静寂が訪れます。この無音の時間こそが、呼吸が停止している瞬間です。数秒から、長い時には数十秒もこの状態が続いた後、まるで溺れていた人が息を吹き返すかのように、「グガッ」「カハッ」といった、あえぐような、あるいはむせるような激しい音と共に、呼吸が再開されます。そしてまた、轟音のいびきが始まる。この「大きないびき→無音→あえぎ呼吸」というサイクルが一晩に何度も繰り返されるのが、睡眠時無tourist無呼吸症候群の典型的な症状です。この症状に気づいた時、どのように本人に伝えれば良いでしょうか。大切なのは、責めるような口調ではなく、心配しているという気持ちを伝えることです。「いびきがうるさくて眠れない」と不満をぶつけるのではなく、「夜中に時々、息が止まっているみたいですごく心配になったの。一度、病院で相談してみない?」と、健康を気遣う言葉で切り出すのが良いでしょう。本人は症状を全く自覚していないことが多いため、スマートフォンの録音・録画機能を使って、実際の様子を聞かせたり見せたりするのも、客観的な証拠として非常に有効です。睡眠時無呼吸症候群は、本人の自覚だけでは発見が難しい病気です。あなたの気づきと優しい一言が、大切なパートナーを深刻な健康リスクから救う、最初のきっかけになるかもしれません。

  • 休日や夜間の激しい胃腸炎、救急外来へ行くべき?

    医療

    胃腸炎の症状は、時と場所を選ばず、しばしば休日や深夜といった医療機関が閉まっている時間帯にピークを迎えることがあります。激しい嘔吐と下痢に苦しみながら、「このまま朝まで我慢すべきか、それとも救急外来へ行くべきか」と悩んだ経験がある方もいるでしょう。この判断は非常に難しいものですが、いくつかの目安を知っておくことで、適切な行動をとることができます。まず、一般的なウイルス性胃腸炎であれば、症状は辛いものの、必ずしも全てのケースで救急受診が必要なわけではありません。しかし、以下のような「危険なサイン」が見られる場合は、ためらわずに救急外来を受診することを強く推奨します。最も重要な判断基準は、「脱水症状の程度」です。水分が全く摂れない、あるいは飲んでもすぐに吐いてしまう状態が続いている場合は、脱水が急速に進行する危険があります。特に、「ぐったりして意識が朦朧としている」「尿が半日以上出ていない」「唇や口の中がカラカラに乾いている」「立ち上がるとめまいやふらつきがする」といった症状は、重度の脱水を示唆しており、点滴による水分補給が必要です。次に、「腹痛の性質」にも注意が必要です。胃腸炎の腹痛は、波があるギューッとした痛みが特徴ですが、「経験したことのないような激しい痛みが持続する」「お腹が板のように硬くなっている」「歩くとお腹に響いて痛い」といった症状は、虫垂炎(盲腸)や腸閉塞、腹膜炎など、緊急手術が必要な他の病気の可能性があります。また、「血便」も重要なサインです。便に血が混じる場合、細菌性の胃腸炎や、虚血性腸炎、大腸憩室炎といった病気が考えられ、専門的な検査や治療が必要になることがあります。特に高齢者や、糖尿病などの持病がある方は、重症化しやすいため、早めの受診が賢明です。これらの危険なサインがなく、少量でも水分が摂れており、意識がはっきりしている場合は、自宅で経口補水液などを摂取しながら安静にし、翌朝にかかりつけ医を受診するという選択も可能です。しかし、少しでも判断に迷う場合は、自己判断で重症化するリスクを冒すよりも、救急外行って専門家の診察を受ける方がはるかに安全です。

  • 診断がつかない頭痛は頭痛外来やペインクリニックへ

    医療

    脳神経内科を受診し、MRIなどの精密検査を受けても「特に異常はありません」と言われた。しかし、慢性的な頭痛は一向に改善しない。そのような、はっきりとした診断がつかずに悩んでいる方は少なくありません。片頭痛や緊張型頭痛といった典型的なパターンに当てはまらない、あるいは複数のタイプの頭痛が混在しているなど、診断が難しいケースは確かに存在します。また、薬を飲んでも効果が薄く、治療が難航することもあります。このように、既存の診療科では解決が難しい頑固な頭痛に悩む人々の受け皿となっているのが、「頭痛外来」や「ペインクリニック」といった、より専門性の高い診療の場です。まず「頭痛外来」は、その名の通り頭痛の診療を専門に掲げている外来です。脳神経内科医が中心となって運営していることが多いですが、病院によっては、脳神経外科医、麻酔科医、精神科・心療内科医、理学療法士、歯科口腔外科医など、様々な分野の専門家がチームを組んで集学的なアプローチを行うこともあります。これにより、例えば首や肩の筋肉の問題、顎関節症、精神的なストレスなど、脳以外の多角的な視点から頭痛の原因を探ることが可能になります。一方、「ペインクリニック」は、主に麻酔科医が「痛み」そのものの治療を専門に行う診療科です。薬物療法はもちろんのこと、その大きな特徴は「神経ブロック注射」という専門的な手技にあります。これは、痛みの信号を伝えている神経の近くに局所麻酔薬などを注射することで、痛みの伝達を遮断し、興奮した神経を鎮める治療法です。特に、後頭部を走行する神経が原因で起こる後頭神経痛や、首の問題が関連する頭痛などに対して高い効果を発揮することがあります。また、頑固な片頭痛や群発頭痛の痛みを和らげる目的で用いられることもあります。どこに行っても原因が分からず、治療法も見つからないと諦めかけているのであれば、一度このような頭痛診療のスペシャリストが集まる場所の扉を叩いてみてはいかがでしょうか。これまでの治療とは異なるアプローチが、長年の苦しみからあなたを解放する新たな光となるかもしれません。

  • 私のリウマチ治療、費用と向き合ったリアルな体験

    生活

    42歳の春、朝起きると両手の指がこわばり、ペットボトルの蓋が開けられないほどの痛みを感じました。最初は単なる疲れだと思っていましたが、症状は足首にも広がり、歩くのも辛くなりました。近所の整形外科から紹介された専門病院で下された診断は「関節リウマチ」。テレビドラマでしか知らなかった病名に、頭が真っ白になりました。医師からは、病気の進行を抑えるために、すぐに治療を始める必要があると説明されました。まず処方されたのは、メトトレキサートという抗リウマチ薬でした。この段階での治療費は、3割負担で診察と検査、薬代を合わせて月1万円程度。これなら何とかなる、と少し安堵したのを覚えています。しかし、私のリウマチは勢いが強く、半年経っても痛みや腫れは十分にコントロールできませんでした。そこで主治医から提案されたのが、「生物学的製剤」の導入でした。関節破壊を強力に防ぐ画期的な薬だと説明されましたが、同時に、治療費が非常に高額になることも告げられました。提示された自己負担額は、月に4万円以上。パートタイマーとして働く私にとって、それはあまりにも重い負担でした。治療の効果への期待と、経済的な不安との間で、私の心は大きく揺れ動きました。家族にも相談できず、一人で悩んでいた時、病院の医療相談室のソーシャルワーカーさんの存在を知りました。藁にもすがる思いで相談に訪れると、彼女は私の話を親身に聞いてくれた上で、「高額療養費制度」という制度について、丁寧に説明してくれました。私の所得であれば、月の自己負担額には上限があり、それを超えた分は払い戻されること。さらに、「限度額適用認定証」を事前に取得すれば、窓口での支払いをその上限額までに抑えられること。目から鱗が落ちる思いでした。早速、夫の会社の健康保険組合に申請し、認定証を手にしました。実際に生物学的製剤の治療を始めると、その効果は劇的でした。あれほど辛かった朝のこわばりが消え、痛みも大幅に軽減しました。そして、会計窓口での支払いは、高額療養費制度のおかげで、心配していた額よりもずっと少ない金額で済みました。もしあの時、一人で抱え込まずに相談していなければ、私は経済的な理由で最善の治療を諦めていたかもしれません。病気と向き合うには、正しい情報を知り、利用できる制度を賢く使うことが不可欠なのだと、身をもって学んだ経験でした。

  • つらい便秘の悩みは何科へ相談すべきか

    医療

    お腹が張って苦しい、何日もお通じがなく、出てもスッキリしない。便秘は性別や年齢を問わず多くの人が経験する、非常に身近な症状です。しかし、「たかが便秘」と軽視して市販薬でごまかしたり、恥ずかしさから医療機関の受診をためらったりしている方は少なくないのではないでしょうか。ですが、慢性的な便秘は生活の質を著しく低下させるだけでなく、時には重大な病気が隠れているサインである可能性もあります。では、いざ病院へ行こうと決心した時、私たちは一体、何科の扉を叩けば良いのでしょうか。このような、一般的な便秘の悩みで、まず最初に受診を検討すべき診療科は「内科」あるいは「消化器内科(胃腸科)」です。どちらの科でも、便秘に対する基本的な診察と治療を受けることが可能です。特に、かかりつけの内科医がいる場合は、そこが最も身近な相談窓口となるでしょう。内科医は、全身の健康状態を幅広く診る専門家であり、便秘という症状の裏に、例えば糖尿病や甲状腺機能低下症といった内科的な病気が隠れていないかという視点からも診察してくれます。また、高血圧や他の病気で服用している薬が便秘の原因になっていないかなど、総合的な観点から原因を探ってくれるのも、かかりつけ内科の強みです。一方で、「消化器内科」や「胃腸科」は、その名の通り、食道、胃、腸といった消化器全般を専門とするエキスパートです。便秘の診断と治療においては、より専門性が高い診療科と言えます。特に、市販薬を長年使っても改善しない慢性的な便秘や、腹痛、腹部膨満感といった他の症状を伴う場合、あるいは大腸がんなどの病気が心配な場合には、最初から消化器内科を受診することで、よりスムーズに専門的な検査や治療へと進むことができます。消化器内科では、必要に応じて大腸内視鏡検査などの精密検査を行い、腸に器質的な異常がないかを直接確認することも可能です。結論として、急な便秘や、まずは気軽に相談したいという場合は、お近くの「内科」へ。長引く便秘や、専門的な検査も視野に入れて根本的な原因を調べたいという場合は、「消化器内科(胃腸科)」を選ぶのが良いでしょう。大切なのは、一人で悩まず専門家に相談すること。それが、つらい便秘の悩みから解放されるための、最も確実な第一歩なのです。