「右足だけがパンパンに腫れている」「左足だけがむくんで、触ると痛い」。このように、片足だけにむくみが現れた場合、それは両足がむくむケースとは全く異なる、緊急性の高い病気が原因である可能性があり、注意が必要です。この場合、専門となる診療科は「血管外科」です。片足だけの急なむくみで、最も警戒しなければならない病気が「深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)」です。これは、長時間同じ姿勢でいること(エコノミークラス症候群)や、手術後、妊娠中などが引き金となり、足の深い部分を走る静脈に血の塊(血栓)ができて詰まってしまう病気です。血流がせき止められるため、その先の足が急激にむくみ、痛みや皮膚の赤み、熱っぽさを伴うのが特徴です。この病気の本当に恐ろしいところは、足にできた血栓が何かの拍子に剥がれ、血流に乗って肺の血管に詰まってしまう「肺血栓塞栓症」を引き起こす可能性があることです。肺の血管が詰まると、突然の激しい胸の痛みや呼吸困難に襲われ、命に関わることもある、極めて危険な状態です。そのため、片足だけの急なむくみと痛みは、救急疾患と考えるべきなのです。血管外科では、超音波(エコー)検査を用いて、足の静脈の血流や、血栓の有無をリアルタイムで詳細に観察します。診断が確定すれば、血栓がそれ以上大きくならないように、また新たな血栓ができないように、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)による治療を直ちに開始します。また、足の表面の血管がボコボコと浮き出て、むくみやだるさを伴う「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」も、血管外科が専門とする病気です。これは、足の静脈にある逆流防止弁が壊れ、血液が足に滞ってしまうことで起こります。命に関わる病気ではありませんが、進行すると皮膚炎や潰瘍の原因となるため、適切な治療が望まれます。このように、特に片足だけのむくみは、血管そのもののトラブルが原因であることが多いです。放置せず、血管の専門家である血管外科を受診することを強くお勧めします。
片足だけのむくみは危険!血管外科という選択肢