激しい痛みと高熱を伴う、大人の手足口病。そのつらい症状がようやく治まり、日常生活に戻れると安堵したのも束の間、数週間から1ヶ月ほど経った後に、体に新たな異変が現れることがあります。それが、手足の「爪」が剥がれてしまう、「爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう)」と呼ばれる後遺症です。これは、手足口病に罹患した人、特にエンテロウイルスD68などの特定のウイルスに感染した場合に見られやすい現象です。爪が剥がれると聞くと、非常に痛々しく、怖いイメージがあるかもしれませんが、多くの場合、痛みは伴いません。症状としては、まず爪の根元部分に横方向の溝や線、あるいは空洞ができ始めます。そして、その部分から、古い爪が新しい爪に押し出されるような形で、徐々に浮き上がってきます。最終的には、爪が根本から自然にポロリと剥がれ落ちます。通常、剥がれ落ちた下には、すでに新しい薄い爪が再生してきているため、出血したり、強い痛みを感じたりすることは稀です。しかし、爪が完全に生え変わるまでの間は、指先がデリケートな状態になるため、注意が必要です。新しい爪はまだ薄くてやわらかいため、外部からの衝撃に弱く、割れたり欠けたりしやすいです。また、剥がれかけの爪が衣類などに引っかかり、無理に剥がれてしまうと、痛みや出血を伴うこともあります。この後遺症に対する特別な治療法はありません。基本的には、新しい爪が丈夫に伸びてくるのを待つことになります。その間、指先を保護するために、絆創膏やテープでカバーしておくのが良いでしょう。爪が引っかからないように、爪切りでこまめに長さを整えることも大切です。通常、手の爪は約半年、足の爪は約1年かけて、完全に新しい爪へと生え変わります。手足口病の回復後に、爪に異変を見つけても、過度にパニックになる必要はありません。これは、病気の回復過程で起こりうる現象の一つです。しかし、もし剥がれた部分に強い痛みがあったり、赤く腫れてきたりした場合は、細菌感染などを起こしている可能性もあるため、皮膚科を受診するようにしてください。
手足口病の後の爪剥がれ。大人が注意すべき後遺症