まぶたの裏にできた内麦粒腫。痛みや異物感が気になり、特に白い膿の点が透けて見えるようになると、「これを針で刺して膿を出せば、すぐに治るのではないか」という衝動に駆られる人がいるかもしれません。しかし、その行為は絶対にやってはいけない、極めて危険な行為です。自分で内麦粒腫を潰そうとすることは、症状を悪化させ、さらなる合併症を引き起こすリスクしかありません。その理由はいくつかあります。まず、衛生管理の問題です。家庭にある針やピンセットは、いくら消毒したつもりでも、医療機関で使われる滅菌された器具とは比べ物になりません。不潔な器具で皮膚を傷つけることで、原因菌であるブドウ球菌だけでなく、他の様々な雑菌を傷口から侵入させてしまう「二次感染」を引き起こす可能性があります。これにより、炎症がさらに悪化し、腫れや痛みがひどくなるだけでなく、最悪の場合、まぶた全体に感染が広がる「眼瞼蜂窩織炎(がんけんほうかしきえん)」という重篤な状態に陥ることもあります。そうなると、点滴による強力な抗生物質治療や、入院が必要になるケースさえあるのです。また、無理に潰そうとすると、正常な組織まで傷つけてしまい、まぶたの形が変形したり、傷跡が残ったりする原因にもなります。さらに、膿を完全に排出しきれず、炎症がまぶたの深部へと広がってしまう危険性もはらんでいます。では、内麦粒腫ができてしまった時の正しい対処法とは何でしょうか。それは、できるだけ早く「眼科を受診する」こと、これに尽きます。眼科では、まず抗生物質の点眼薬や眼軟膏が処方され、炎症を鎮めます。多くの場合、これらの保存的な治療で膿は自然に吸収されたり、自然に破れて排出されたりして治癒に向かいます。しかし、膿が大量に溜まって腫れや痛みが非常に強い場合や、薬だけでは改善しない場合には、医師の判断のもとで「切開排膿」という処置が行われることがあります。これは、滅菌された清潔な環境で、医師が専門的な器具を用いて小さな切開を加え、安全かつ確実に膿を排出する医療行為です。自分で潰す行為とは、安全性において天と地ほどの差があります。気になるしこりや痛みは、自己判断で危険な行為に及ばず、必ず目の専門家である眼科医に委ねることが、最も安全で確実な回復への道なのです。
自分で潰すのは絶対ダメ!内麦粒腫の正しい対処