医療専門職による監修記事やインタビュー

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  • まぶたの裏の痛み、内麦粒腫の正体と原因

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    まぶたが腫れて痛む「ものもらい」。多くの人が一度は経験したことがあるこの症状ですが、実はいくつかの種類があることをご存知でしょうか。その中でも、まぶたの裏側にできて、ゴロゴロとした異物感や強い痛みを伴うのが「内麦粒腫(ないばくりゅうしゅ)」です。これは、まつ毛の生え際あたりにできる一般的な「外麦粒腫」とは異なり、より深部で炎症が起きるため、外見からは腫れが分かりにくいこともあります。内麦粒腫の直接的な原因は、私たちの皮膚や鼻の中、喉などに常に存在している「黄色ブドウ球菌」などの細菌が、まぶたにある分泌腺に感染することです。では、どの分泌腺に感染するのでしょうか。その舞台となるのが「マイボーム腺」です。マイボーム腺は、まつ毛の生え際の内側にずらりと並んでいる小さな器官で、目の表面を覆う涙が蒸発しないように、油分を分泌するという非常に重要な役割を担っています。このマイボーム腺の出口が何らかの理由で詰まり、分泌物が溜まってしまうと、そこが細菌にとって格好の繁殖場所となります。そして、細菌が中で増殖し、急性的な炎症と化膿を引き起こした状態が、内麦粒腫なのです。まぶたを裏返すと、白や黄色っぽい膿の点が確認できることもあります。外麦粒腫が毛穴や汗腺への感染であるのに対し、内麦粒腫は目の潤いを守る大切なマイボーム腺への感染であるという違いを理解しておくことが重要です。この原因菌であるブドウ球菌は、普段は特に悪さをしない常在菌ですが、体が弱っていたり、衛生状態が悪かったりすると、途端に牙をむきます。つまり、内麦粒腫の発症は、単に細菌がそこにいただけではなく、感染を許してしまうような体側の要因や環境的な要因が複雑に絡み合っている結果と言えるのです。

  • 首の骨が原因かも?頚椎症としびれの関係

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    指先にしびれを感じると、多くの人は手や手首に原因があると考えがちです。しかし、実はその大元である「首」に問題が隠れているケースも少なくありません。私たちの首の骨、すなわち頚椎(けいつい)の中には、脳から腕や手へと向かう重要な神経の束である脊髄が通っています。この頚椎が、加齢などによって変形したり、骨と骨の間にあるクッション材の役割を果たす椎間板が飛び出したり(頚椎椎間板ヘルニア)すると、脊髄や、そこから枝分かれする神経根が圧迫され、その神経が支配する領域、つまり腕や指先にしびれや痛み、力の入りにくさを引き起こすのです。これを総称して「頚椎症」と呼びます。頚椎症によるしびれには、いくつかの特徴があります。まず、しびれが特定の指だけでなく、腕全体や肩甲骨の周りにも広がることがあります。また、首を後ろに反らしたり、特定の方向に傾けたりすると、しびれが強くなるのも特徴的なサインです。朝起きた時に首や肩が凝り固まっている、上を向くのがつらい、といった首自体の症状を伴うことも多いです。どの神経が圧迫されているかによって、しびれの出る指も異なります。例えば、親指や人差し指がしびれる場合は、主に第6頚神経、中指は第7頚神経、薬指や小指は第8頚神経の障害が疑われます。このような症状に心当たりがある場合、受診すべき診療科は「整形外科」です。整形外科では、レントゲンやMRIといった画像検査を用いて、頚椎の状態や神経の圧迫の程度を詳しく調べます。治療は、まず首への負担を減らすための生活指導や、首を牽引する理学療法、炎症を抑える薬の内服といった保存的な方法が中心となります。首の安静を保つために、頚椎カラーという装具を処方されることもあります。ほとんどの場合はこれらの治療で症状が改善しますが、麻痺が進行して歩行障害が出たり、日常生活に深刻な支障をきたしたりする場合には、神経の圧迫を取り除くための手術が検討されることもあります。指先のしびれを感じたら、一度、ご自身の首の状態にも目を向けてみることが大切です。

  • 手首や肘が原因?整形外科で見る指のしびれ

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    指先のしびれという症状は、実はしびれている指先の部分ではなく、そこへ向かう神経の通り道のどこかに原因が隠れていることがほとんどです。特に、手首や肘といった関節部分は、神経が狭いトンネルのような場所を通るため、圧迫を受けやすいウィークポイントとなっています。このような末梢神経の圧迫が原因のしびれは、整形外科の得意分野です。代表的な疾患の一つが「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」です。これは、手首の内側にある「手根管」というトンネルの中を通る正中神経が圧迫されて起こります。特徴的なのは、親指、人差し指、中指、そして薬指の親指側の半分がしびれることです。小指にはしびれが及ばないのが、この疾患を見分ける重要なポイントです。明け方にしびれや痛みで目が覚めたり、手を振ると症状が少し楽になったりするという訴えもよく聞かれます。主に、手をよく使う仕事をしている人や、妊娠・出産期、更年期の女性に多く見られます。もう一つ代表的なのが「肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)」です。これは、肘の内側にある「肘部管」というトンネルで尺骨神経が圧迫される病気です。症状は、薬指の小指側半分と小指にしびれや感覚の鈍さが現れます。肘を曲げた状態が長く続くと症状が悪化しやすく、例えば電話で長時間話したり、頬杖をついたりする癖がある人は注意が必要です。進行すると、指の間の筋肉が痩せてきて、細かい作業がしづらくなることもあります。整形外科では、問診や診察でどの神経が障害されているかを推測し、神経伝達速度検査などで診断を確定させます。治療は、まず安静や装具の装着、ビタミン剤の内服といった保存療法から開始しますが、症状が重い場合や改善しない場合には、神経の圧迫を取り除くための手術が行われることもあります。どの指がしびれているかを正確に把握することが、原因究明への近道となるのです。

  • ストレスも一因?心療内科が関わる指のしびれ

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    整形外科や脳神経内科で検査をしても、特に明らかな異常が見つからない。それなのに、指先のジンジンとしたしびれや冷たい感覚が消えない。このような、原因のはっきりしないしびれに悩んでいる場合、その背景に「ストレス」や「自律神経の乱れ」が関わっている可能性があります。私たちの体は、心と密接に繋がっています。仕事や人間関係などで強い精神的なストレスを受け続けたり、過労や不規則な生活で心身が疲弊したりすると、体の様々な機能を自動的にコントロールしている自律神経のバランスが崩れてしまいます。自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の二つがあり、これらがうまく切り替わることで健康が保たれています。しかし、ストレスによって交感神経が過剰に優位な状態が続くと、血管が収縮して血行が悪くなります。特に、手足の指先のような末端部分は血行不良の影響を受けやすく、それがしびれや冷えといった症状として現れることがあるのです。また、自律神経の乱れは、不安や緊張感を高め、痛みや不快な感覚に対して過敏にさせてしまうこともあります。そのため、実際にはごくわずかな刺激や感覚の変化を、脳が「しびれ」として強く認識してしまうというケースも考えられます。このような心因性の症状が疑われる場合、相談先として「心療内科」や「精神科」が選択肢となります。これらの診療科では、薬物療法だけでなく、カウンセリングを通じてストレスの原因を探ったり、リラクゼーション法などの対処スキルを身につけたりすることで、心と体の両面から症状の改善を目指します。もちろん、まずは整形外科などで器質的な疾患がないことをきちんと確認することが大前提です。その上で、もしあなたが長引く原因不明のしびれに加え、不眠、動悸、気分の落ち込み、食欲不振といった他の不調も感じているのであれば、一度、心の専門家に相談してみることで、解決への新たな道が開けるかもしれません。

  • JAK阻害薬とは?新しいリウマチ治療の費用感

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    関節リウマチの治療薬は、ここ十数年で目覚ましい進歩を遂げてきました。その中でも、生物学的製剤に続いて登場し、治療の選択肢を大きく広げたのが「JAK(ジャック)阻害薬」と呼ばれる新しいタイプの経口薬(飲み薬)です。生物学的製剤が注射や点滴で投与されるのに対し、JAK阻害薬は1日1回または2回の服用で済むため、自己注射の負担や通院の手間が軽減されるという大きなメリットがあります。この薬は、関節リウマチの炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質の情報を細胞内に伝える「JAK(ヤヌスキナーゼ)」という酵素の働きをブロックすることで、炎症や痛みを強力に抑えます。その効果は生物学的製剤に匹敵するとされ、多くの患者さんにとって新たな希望となっています。では、気になるその費用はどのくらいなのでしょうか。JAK阻害薬も、生物学的製剤と同様に薬価が高く設定されているため、治療費は高額になります。3割負担の医療保険を利用した場合、薬剤の種類や用法・用量によって異なりますが、月々の薬剤費だけでおおよそ35,000円から45,000円程度が目安となります。これに加えて、診察料や定期的な検査費用がかかります。やはり、従来の抗リウマチ薬のみで治療する場合と比較すると、負担は大幅に増加します。しかし、ここでも心強い味方となるのが、これまで述べてきた「高額療養費制度」です。JAK阻害薬による治療も、この制度の対象となります。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払いは、所得に応じた自己負担限度額までとなります。例えば、一般的な所得の方であれば、月々の支払いは最終的に8万円台に、さらに勤務先の健康保険組合などに「付加給付制度」があれば、2万5000円程度にまで抑えることが可能です。飲み薬だからといって、注射薬である生物学的製剤と比べて費用が格段に安いわけではありません。治療法を選択する際には、それぞれの薬のメリット・デメリット(効果、副作用、投与方法など)を主治医とよく相談すると共に、費用面についても、高額療養費制度を利用した場合の最終的な自己負担額がいくらになるのかを具体的に確認することが非常に重要です。

  • お子様の便秘はまず小児科を訪ねて

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    子供が何日も排便がなく、お腹が張って苦しそうにしている。いきんでも硬い便が少ししか出ず、時には泣き出してしまう。そんな我が子の姿を見るのは、親として非常につらいものです。大人の便秘とは異なり、子供の便秘には特有の原因や配慮すべき点が多く、どの診療科に連れて行くべきか迷う方も多いでしょう。このような時、ためらわずに選ぶべきは「小児科」です。子供の便秘の相談先として、小児科が最もふさわしい理由はいくつかあります。第一に、小児科医は「成長、発達の途上にある子供の体の特性を熟知している」専門家だからです。大人の消化管は完成されていますが、乳幼児の消化機能はまだ未熟です。また、排便という行為には、便意を感じ、いきんで肛門を緩めるという複雑な神経の連携が必要ですが、この機能も年齢と共に発達していきます。小児科医は、こうした子供の発達段階を理解した上で、その年齢に合った原因を探り、適切な診断を下すことができます。第二に、「薬の処方」における専門性です。子供の体はデリケートであり、大人と同じ薬を使うことはできません。小児科医は、子供の年齢や体重を正確に計算し、最も安全で効果的な薬を、適切な用量で処方する知識と経験を持っています。便秘薬にも様々な種類がありますが、子供に使用できるものは限られており、その選択と調整には専門的な判断が不可欠です。第三の理由は、「心理的な側面への配慮」です。子供の便秘の原因には、身体的な問題だけでなく、精神的な問題が深く関わっていることが少なくありません。例えば、トイレトレーニングの際に強く叱られた経験から、排便自体に恐怖心を抱いてしまったり、小学校に入学して、学校のトイレでは恥ずかしくて排便を我慢してしまったりすることが、慢性的な便秘の引き金になるケースは非常に多いのです。小児科医は、こうした子供の心の動きにも目を向け、親子関係や生活環境も含めた上で、総合的なアドバイスをしてくれます。子供の便秘は、単に薬で出すだけでは解決しません。体と心、そして生活習慣全体をトータルでケアしていく視点が必要であり、それら全てを網羅できるのが、子供の総合医である小児科なのです。

  • その症状を放置する本当の怖さとは

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    大きないびきや日中の眠気といった、睡眠時無呼吸症候群の症状。これらを「いつものこと」「体質だから仕方ない」と軽視し、放置してしまうと、その先には深刻な健康被害が待ち受けています。この病気の本当の怖さは、単に睡眠の質が低下することではなく、全身の様々な臓器にダメージを与え、命に関わるような重大な生活習慣病の引き金となる点にあるのです。睡眠中に呼吸が止まると、体は慢性的な「低酸素状態」に陥ります。この低酸素状態は、血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を促進させる大きな原因となります。また、体は生命の危機を感じて交感神経を興奮させ、血圧や心拍数を上昇させます。この状態が一晩中繰り返されることで、心臓や血管には絶えず大きな負担がかかり続けるのです。その結果として、まず現れるのが「高血圧」です。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、高血圧を合併している割合が非常に高く、治療の難しい早朝高血圧の原因にもなります。そして、動脈硬化と高血圧は、さらに深刻な病気へと繋がっていきます。心臓に負担がかかり続けることで、「不整脈」や「狭心症」、「心筋梗塞」といった虚血性心疾患のリスクが著しく高まります。また、脳の血管にダメージが及べば、「脳梗塞」や「脳出血」といった脳卒中を引き起こす危険性も増大します。実際に、重症の睡眠時無呼吸症候群を未治療のまま放置すると、心血管系の病気で死亡するリスクが数倍に跳ね上がるというデータもあります。さらに、代謝にも悪影響を及ぼします。慢性的な低酸素状態は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くするため、「糖尿病」を発症しやすくなったり、既に糖尿病の人は血糖コントロールが悪化したりします。睡眠時無呼吸症候群は、単なるいびきの問題ではありません。それは、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病といった、日本の死因の上位を占める病気の温床となる、静かでしかし確実に体を蝕んでいく「サイレントキラー」なのです。症状に心当たりがある場合は、将来の深刻な病気を予防するためにも、早期の検査と治療が不可欠です。

  • 症状でわかる便秘の適切な診療科

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    便秘という一つの症状でも、その原因や伴う症状は人によって様々です。そして、その原因によっては、相談すべき最適な診療科が異なる場合があります。自分の症状をよく観察し、より適切な専門家を選ぶことで、診断と治療への道のりがスムーズになります。ここでは、症状に応じた診療科の選び分けについて解説します。まず、最も一般的な相談先は「消化器内科(胃腸科)」です。特に、「慢性的な便秘に長年悩んでいる」「市販薬が効かなくなってきた」「強い腹痛やお腹の張りを伴う」といった場合には、消化器の専門家である消化器内科が最適です。大腸の動きそのものに問題がある機能性の便秘なのか、あるいはポリープやがん、炎症など、器質的な問題が隠れていないかを判断し、必要であれば大腸内視鏡検査などの専門的な検査を行って原因を突き止めます。次に、排便時のつらい症状がある場合に検討したいのが「肛門科(肛門外科)」です。例えば、「便が硬くて出口で詰まって出せない」「排便時に強い痛みがある」「トイレットペーパーに血が付く」といった症状がある場合、その原因は肛門や直腸にある可能性が高いです。硬い便によって肛門が切れる切れ痔や、いきみによってできるいぼ痔などが、痛みによる排便への恐怖心を生み、便秘をさらに悪化させるという悪循環に陥っているケースは少なくありません。肛門科は、こうした肛門周囲のトラブルを専門的に診断、治療する科です。また、女性特有の悩みとして、「婦人科」が選択肢になることもあります。もし、便秘の症状が「月経周期と明らかに連動している」、あるいは「ひどい月経痛や下腹部痛を伴う」といった場合には、子宮筋腫や子宮内膜症といった病気が物理的に腸を圧迫し、便の通りを妨げていることがあります。このような場合は、婦人科での診察が不可欠です。最後に、ストレスとの関連が強い場合は「心療内科」への相談も視野に入ります。「強いストレスを感じると便秘になる」「旅行など、環境が変わると全く出なくなる」といった症状は、過敏性腸症候群の便秘型かもしれません。心療内科では、ストレス管理や自律神経を整えるアプローチで、腸の緊張を和らげる治療を行います。自分の症状を正しく見極め、適切な専門家を訪ねることが、効果的な治療への第一歩となるのです。

  • 日中のだるさや頭痛も症状の一つ

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    睡眠時無呼吸症候群の影響は、夜間の睡眠中だけにとどまりません。むしろ、日中の生活の質を大きく損なう様々な症状となって現れることこそが、この病気の深刻な側面と言えるでしょう。最もよく知られている日中の症状は強烈な眠気ですが、それ以外にも、心身に多岐にわたる不調を引き起こします。その一つが、「起床時の頭痛」です。朝、目が覚めた時になぜか頭が重かったり、鈍い痛みが続いたりする経験はありませんか。これは、睡眠中に呼吸が止まることで、体内の二酸化炭素がうまく排出されずに溜まってしまい、脳の血管が拡張することが原因で起こると考えられています。通常、数時間で痛みは和らぎますが、毎朝のように繰り返される頭痛は、質の良い睡眠がとれていない明確な証拠です。また、「慢性的な倦怠感」や「疲労感」も多くの患者さんが訴える症状です。夜間に体が低酸素状態と覚醒を繰り返すことは、本人に自覚がなくても、体にとってはフルマラソンを走っているかのような大きな負担となります。そのため、どれだけ長く寝ても疲れが取れず、日中はずっと体がだるく、気力が湧かないという状態に陥ってしまいます。さらに、脳への影響も深刻です。慢性的な酸素不足は、脳の働きを低下させ、「集中力の低下」や「記憶力の悪化」を招きます。仕事や勉強の効率が落ちたり、物忘れが多くなったりするだけでなく、新しいことを覚えるのが困難になることもあります。こうしたパフォーマンスの低下は、本人の自信を喪失させ、精神的なストレスにも繋がります。実際、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの中には、原因不明の「気分の落ち込み」や「イライラ」といった、うつ病に似た精神症状を呈する方も少なくありません。日中の様々な不調が、実は夜間の無呼吸に起因している可能性を理解し、その根本原因に対処することが、健やかな毎日を取り戻すための鍵となるのです。

  • 長引く咳や息苦しさ、喘息は何科へ?

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    季節の変わり目や夜中、明け方になると、咳が止まらなくなったり、息をすると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がしたりする。少し動いただけでも息が切れてしまう。このような症状に心当たりがある場合、それは単なる風邪ではなく「気管支喘息」のサインかもしれません。いざ、このつらい症状を何とかしたいと病院へ行こうと思っても、多くの人が「一体、何科を受診すれば良いのだろう」という疑問に直面します。喘息の診療を専門とする診療科は、主に「呼吸器内科」と「アレルギー科」です。どちらの科でも喘息の診断と治療は可能ですが、それぞれの科に少しずつ特徴があります。まず「呼吸器内科」は、その名の通り、気管や気管支、肺といった呼吸器全般の病気を専門とするエキスパートです。喘息はもちろんのこと、咳や息切れの原因となる他の病気、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎、肺がんなどとの鑑別診断に長けています。特に、喫煙歴のある方や、中高年になってから初めて喘息のような症状が出てきた方は、他の呼吸器疾患の可能性も視野に入れて総合的に診てくれる呼吸器内科を受診するのがより安心です。一方で「アレルギー科」は、アレルギー反応によって引き起こされる様々な病気を専門とします。喘息の多くは、ホコリやダニ、花粉といったアレルゲンが引き金となって気道の炎症が起こるアレルギー性の疾患です。アレルギー科では、血液検査や皮膚テストなどでアレルギーの原因物質(アレルゲン)を特定し、そのアレルゲンを避けるための生活指導も含めた、より根本的なアプローチを得意としています。喘息以外にもアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などを合併している方は、アレルギー科でトータルに診てもらうのが良いでしょう。結論として、どちらの科を受診しても専門的な治療は受けられます。まずは通いやすい方、あるいはかかりつけ医からの紹介がある方を選ぶと良いでしょう。大切なのは、自己判断で放置せず、専門医の診断を仰ぐことです。