「ママ、RSウイルスになっちゃった」。保育園に通う娘からそう告げられた時、私は「大変だね、早く治るといいね」と、どこか他人事のように考えていました。RSウイルスは子供の病気、大人はかかっても軽い風邪程度。そんな甘い認識が、地獄のような二週間を招くことになるとは、その時の私は知る由もありませんでした。娘の看病から三日後、私の喉に軽いイガイガを感じたのが始まりでした。案の定、その夜には熱が三十八度まで上がり、体中の節々が痛み始めました。まあ、看病疲れで風邪でもひいたのだろう。そう高をくくって、解熱剤を飲んで寝ました。しかし、翌日から症状は明らかに悪化の一途をたどりました。熱は下がらず、鼻水が滝のように流れ、そして、今までに経験したことのないような、胸の奥から響くような咳が出始めたのです。それは、乾いた咳ではありませんでした。ゴホッ、ゴホッと一度咳き込むたびに、粘り気の強い痰が絡みつき、息が詰まりそうになるのです。特に辛かったのは夜でした。横になると、痰が気道を塞ぐのか、咳の発作がひどくなり、一睡もできませんでした。咳のしすぎで腹筋は筋肉痛になり、頭にもガンガンと響きます。発症から一週間が経つ頃には、熱は下がったものの、咳と倦怠感はピークに達していました。体力は完全に底をつき、家事も育児もままならない。まさに、生きているのがやっと、という状態でした。結局、呼吸器内科を受診し、RSウイルスと診断されたのは、発症から十日近く経ってからでした。特効薬はなく、処方された去痰薬と気管支拡張薬を飲みながら、ひたすら回復を待つしかありません。咳がようやく落ち着き、人間らしい生活を取り戻せるまでには、発症から三週間近くかかりました。子供からうつる病気は、大人がかかると本当に大変なことになる。この経験を通じて、私はそれを骨の髄まで思い知らされました。
私が体験した大人のRSウイルス闘病記