抗生物質による治療を終え、熱も下がり、咳もほとんど出なくなった。レントゲンでも肺の影はきれいに消え、医師からも「治癒」と告げられた。それなのに、なぜか体が鉛のように重く、すっきりしないだるさ(倦怠感)だけが続く。肺炎を経験した人の中には、このような「後遺症」とも言える不調に悩まされる方が少なくありません。微熱などの分かりやすい症状がないため、周りからは「もう治ったはずなのに、怠けているのでは?」と誤解されがちですが、この倦怠感には、ちゃんとした理由があります。肺炎後の倦怠感の最大の原因は、病気との闘いによって、体が深刻な「エネルギー消耗状態」に陥っていることにあります。肺炎は、肺という重要な臓きの広範囲で、細菌やウイルスと、体の免疫システムが激しい戦いを繰り広げる病気です。この戦いのために、体は大量のエネルギーや、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった栄養素を消費します。また、発熱や咳、呼吸困難といった症状も、非常に体力を消耗させます。つまり、病気が治った直後の体は、マラソンを全力で走りきった後のように、エネルギーも栄養も枯渇しきった状態なのです。この「ガス欠状態」から、完全に回復するには、相応の時間が必要となります。また、炎症によってダメージを受けた肺の組織が、完全に修復されるのにも時間がかかります。肺の機能が本調子に戻るまでは、少し動いただけでも息切れを感じたり、疲れやすかったりするのは、ある意味で当然のことなのです。さらに、長期間にわたる闘病生活や、思うように回復しないことへの不安といった「精神的なストレス」も、倦怠感を増強させる一因となります。では、このつらい倦怠感から抜け出すためには、どうすればよいのでしょうか。答えは、シンプルですが「焦らず、無理せず、休養をとる」ことに尽きます。病気が治ったからといって、すぐに以前と同じペースで仕事や活動を再開するのではなく、まずは十分な睡眠を確保し、体を休ませることを最優先にしてください。食事も、消化が良く、タンパク質やビタミンが豊富な、バランスの取れたものを心がけましょう。そして、体力が戻ってきたら、ウォーキングなどの軽い運動から少しずつ始め、徐々に体を慣らしていくことが大切です。