入院の手続きの際に、病院から差額ベッド代が必要な個室しか空いていないと言われ、困惑した経験を持つ方は少なくありません。しかし、法的な観点や厚生労働省の通知に基づけば、患者に選択の余地がない状況で差額ベッド代を請求することは認められていないのが原則です。もしも、希望していないにもかかわらず個室への入室を求められた場合は、まず病院の相談窓口や医事課に対して、自分は差額ベッド代のかからない大部屋を希望しているという意思を明確に伝える必要があります。病院側が満床を理由に個室を案内する場合でも、それは病院側の運営上の都合であり、患者がその追加費用を負担する義務はありません。重要なのは、病院が提示する同意書に安易に署名をしないことです。同意書にサインをしてしまうと、それは自発的に個室を選択したという意思表示とみなされ、後から支払いを拒否することが極めて困難になります。もしサインを求められた際、大部屋が空くまでの一時的な避難措置として個室に入るのであれば、差額ベッド代は支払わない旨を口頭だけでなく書面で残しておくなどの防衛策も検討すべきです。また、治療上の必要性から個室に入れられた場合、例えば感染症の疑いや重篤な状態での集中管理が必要なケースでも、病院は差額ベッド代を請求してはならないとされています。これらは医療提供側の判断によるものであり、患者のサービス選択ではないからです。もし退院時に高額な請求をされ、それが納得のいかないものであれば、まずは内訳の説明を求め、厚生労働省の通知に照らし合わせて適切かどうかを確認してください。解決しない場合は、各自治体に設置されている患者の声相談窓口などの第三者機関に相談することも有効な手段となります。医療機関との信頼関係を壊したくないという心理から黙って支払ってしまう人も多いですが、家計を守るためには正当な権利を主張することも必要です。差額ベッド代は自由診療の一種であり、契約が成立して初めて発生する費用であることを忘れてはなりません。