特定機能病院の約九割は大学病院が占めています。この事実は、大学病院という存在が日本の高度医療の発展といかに密接に関わっているかを端的に示しています。大学病院が特定機能病院としての責務を果たすとき、そこには「診療」「教育」「研究」という三つの柱が不可欠な要素として存在します。まず診療面では、地域のクリニックや一般病院では対応不可能な症例、例えば臓器移植や難治性のがん、複雑な心臓手術、希少な難病の診断などを一手に引き受けます。そこには各分野の権威と呼ばれる医師たちが集結し、最新の知見に基づいたチーム医療が展開されています。しかし、大学病院が真に特定機能病院として価値を発揮するのは、その診療の裏側にある研究と教育のプロセスです。研究においては、日々接する困難な症例を単なる「治療の対象」として終わらせるのではなく、なぜその病気が起きるのか、より効果的な新しい薬はないのかといった問いを立て、基礎研究と臨床試験を繰り返します。特定機能病院として承認されるためには、この研究実績も厳格に評価されます。新しい術式が開発され、それが世界中の教科書に載るようなプロセスは、まさに特定機能病院という環境があって初めて可能になるものです。次に教育の側面です。ここは未来のドクターたちが生まれる苗床です。特定機能病院には、医学生だけでなく研修医や専門医を目指す若手医師、さらに認定看護師や専門薬剤師を目指す者たちが集まります。彼らは指導医の厳しい監視のもと、高度な医療技術だけでなく、患者への接し方や医療安全の重要性を実地で学びます。特定機能病院での診療に時間がかかったり、多くのスタッフが関わったりするのは、この教育という未来への投資が含まれているからです。一方で、これらの責務を果たすためには膨大なコストと人員が必要となります。大学病院の医師たちは、日中の外来や手術をこなしながら、夜間は研究論文の執筆や後進の指導にあたるという、極めて過酷なスケジュールの中で働いています。特定機能病院としての質を維持するためには、この働く環境の改善も大きな課題となっています。患者として大学病院を受診する際、私たちは自分が受けている治療が、過去の多くの研究の賜物であり、同時に未来の医療人を育てる糧となっていることを理解する必要があります。特定機能病院という称号は、単なる格式ではなく、日本の医療の未来を創り続けるという終わりのない挑戦へのコミットメントなのです。
大学病院が担う教育研究と特定機能病院としての責務