インフルエンザウイルスが子供の体内に入り込むと、そこでは目に見えない激しい攻防戦が繰り広げられ、それが私たちの目に見える「症状」として現れます。大人の体に比べて免疫システムが未発達な子供にとって、インフルエンザは全身を巻き込む大きなイベントです。まず、ウイルスが喉や鼻の粘膜に付着して細胞内に侵入すると、子供の体はこれを外敵と認識し、即座に免疫細胞を動員します。この際、体内で大量に放出されるのがサイトカインと呼ばれる物質です。サイトカインは脳の体温調節中枢に働きかけ、ウイルスの増殖を抑えるために体温を急激に上昇させます。これが、インフルエンザ特有の突然の高熱の正体です。子供の体温が四十度近くまで上がるのは、それだけ免疫システムがフル稼働してウイルスと戦っている証拠でもあります。高熱と同時に現れる悪寒や震えは、体温をさらに上げるために筋肉を細かく収縮させて熱を産生している反応です。また、全身の関節痛や筋肉痛は、サイトカインが全身を巡り、炎症を引き起こしている副産物として現れます。呼吸器症状については、ウイルスが気道の粘膜細胞を破壊し、その修復過程で炎症が起きることで咳や痛みが生じます。子供の場合、気道が細いため、少しの腫れでも呼吸が苦しくなりやすく、ゼーゼーという音が聞こえる「インフルエンザ脳症」以外にも「喉頭炎(クループ症候群)」などの合併症を引き起こしやすい傾向があります。さらに、子供のインフルエンザで特徴的な嘔吐や下痢といった消化器症状は、ウイルスが直接腸管を攻撃する場合だけでなく、全身の激しい炎症反応によって自律神経が乱れ、消化機能が一時的に低下することでも起こります。このように、インフルエンザの症状一つひとつは、体がウイルスを排除しようとする懸命な防御反応の結果なのです。しかし、子供の場合はこの反応が過剰になりすぎてしまうことがあり、それが脳症や心筋炎といった重篤な合併症の引き金になることもあります。科学的な視点から症状を理解することは、今子供の体の中で何が起きているのかを客観的に把握する助けとなり、不必要に恐れることなく、適切なタイミングで医療の助けを借りる判断基準を与えてくれます。子供の持つ自然治癒力を信じつつ、その反応が限界を超えないよう見守ることが、看病の本質と言えるでしょう。
インフルエンザウイルスが子供の体に引き起こす免疫反応と症状