子供のインフルエンザにおいて、保護者が最も恐怖を感じ、かつ対策を急がなければならないのが、高熱に伴う「異常行動」です。長年、小児科の最前線で子供たちを診てきた専門医は、この異常行動について次のように警鐘を鳴らしています。まず理解していただきたいのは、異常行動は抗インフルエンザ薬の副作用によるものと誤解されがちですが、実際には薬の服用の有無に関わらず、インフルエンザウイルスそのものが引き起こす高熱や脳への影響によって発生するケースが多いということです。特に就学前の幼児から小中学生にかけて多く報告されており、発症から二日以内、熱が最も高い時期に頻発します。具体的な症状としては、突然笑い出す、怯えた表情で部屋の隅に逃げる、実在しないものが見えると言う、あるいは窓から飛び降りようとする、外に走り出そうとするといった行動が挙げられます。これらは単なる寝ぼけやうわ言とは異なり、子供の意識が朦朧としたまま、非常に強い衝動を伴って行われるため、大人の力でも制止するのが難しい場合があります。専門医は、インフルエンザと診断されたら、少なくとも発熱から二日間は、子供を一人きりにしないことを徹底するようアドバイスしています。トイレに行く際や食事の準備の際も、誰かが付き添うか、子供の動きがわかる状態にしておく必要があります。また、住環境における安全確保も不可欠です。ベランダに面した窓の鍵を確実にかけることはもちろん、玄関のドアにはチェーンロックをかけ、子供が自力で外に出られないようにしてください。二階以上の部屋で寝かせている場合は、一階の部屋に移動させることも有効な事故防止策です。さらに、異常行動が見られた際は、子供の名前を大きく呼び、優しく体をさすって落ち着かせるよう努めます。もし異常行動が長く続く、あるいはけいれんを伴う場合は、インフルエンザ脳症の初期段階である可能性も否定できないため、即座に医師の診断を仰ぐ必要があります。インフルエンザの症状は単なる熱や咳にとどまらず、子供の脳や行動にまで大きな影響を及ぼす可能性があることを正しく認識し、命を守るための物理的な環境整備を怠らないことが、この冬の看病における最優先事項なのです。
小児科医へ聞くインフルエンザによる子供の異常行動への注意